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iBeaconを使ったイベントを実施する時に気にしたい9のこと *森のパスポート 信州の収穫祭篇*

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秋ですね。とはいえもうすぐ12月で丸の内界隈ではイルミネーションが綺麗です。

つまり、冬です。

どちらでも良いですね。こんにちは。Qawasakiです。
先日、小諸ツリーハウスプロジェクト「信州の収穫祭」にて森のパスポートを実施してきました。

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秋の紅葉に染まるアウトドア空間は良い具合にゆっくりとした空気感があってアプリでも採集出来るアキアカネというトンボが飛んでいたりする中で、大人も子供も一緒に森のパスポート、楽しんでもらえました。

イベントやワークショップについては前回のBe-PAL西湖で布田さんに説明してもらったので今回は趣向を変えて、iBeaconを使ったイベント実施の際に気をつけている事などのを書いてみたいと思います。

■1 iBeaconを入れる筐体を作って防風防塵防寒対策をしよう

森のパスポートで使っているiBeaconは2代目のデバイスです。初期はApplix社が出していた単三電池型のビーコンをつかっていて、筐体も初代は巣箱型の箱を作って設置していました。

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※右側緑のデバイスがMyBeacon®、赤い方が2代目のACCESS社ビーコンモジュール

屋内のビーコン施策なら良いのですが森のパスポートのようなアウトドア実施の場合は雨風防塵防寒対策も必要になります。
雨風防塵はビニール袋でビーコンモジュールを包めばある程度はカバー出来ます。
もし神経質な状況や過酷な環境化の実施でコストを問わないならば防塵対策がされたビーコンも販売されてるのでそれを使いましょう。

そして寒いとビーコンの電力消費量も上がります。
ビーコンは無線電波を放つだけなので排熱対策は要らないのですが、筐体などである程度の温度は担保した方が安全に運用出来ると思います。氷点下20度とかになるとどうなのかは疑問です。
今度はその辺もやってみたいですが、そんな環境じゃ誰も虫を捕まえに来てくれないのが悩みどころです。

■2 筐体はある程度見つけやすく高い場所にも簡単に設置出来る形状に

前述した巣箱型の初代筐体ですが、1つだけ問題がありました。

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こんな箱は市販されてるはずもないので、レーザーカッターで切り出して接着剤で一つ一つ組み立てたのですが、これが超、面倒です。レーザーカットも原料の木材コストもかかるし量産も限界があります。

設置は写真のように木に紐で吊るすのですが、あまり高いところに吊るすと安全面や電池交換の運用が大変という問題も出てきます。なので、ビーコンは小型のACCESS社のモジュールにしました。ボタン電池型になり大きさがかなり削減されたのでケースをフリスクケースに変更しました。

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上からレーザカットした木材を貼付ければ立派な筐体になります。設置もポンと置くだけで木の上に置いたり固定も出来ます。これにより現地でのビーコン設置の手間が大幅に削減されました。
現地での動作テストなどで当日時間を取られる事が多いのでこういう時間の削減は結構大きいです。

ですが、小さくすればするほど暗い環境では見つけ難くなるのもお忘れなく。
森のパスポートは屋外で当日回収で陽が暮れたキャンプ上や山の中では回収が不可能になるのでバタバタしてたりします。

■3 ビーコンは地面に置くのではなく80cmくらいがおすすめ

ビーコンは無線電波を放つデバイスです。電波は回転楕円体の形状で広がり伝播します。この空間をフレネルゾーンと呼びます。フレネルゾーンの一部にでも障害物があれば通信距離に影響するらしいです。
一般的にフレネルゾーン半径の60%を確保できれば通信を良好に行えるといわれています。
何が言いたいかというと地面にビーコンを直置きしてしまうと下図のように電波のロスが発生します。
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森のパスポートでは万が一見つかっても大丈夫なように筐体クラフトもしていますが、やっぱりビーコンは見えないのにアプリが反応する方が体験のクオリティは高くなります。
電波も考慮して木の幹や岩の上などやや高い位置に設置して電波のロスを減らしています。自然環境化では電波が反射するものも無く、干渉も少ないので電波強度の設定が読み難いです。
逆に強度を下げたい場合などはわざと地面に置いてロスを出したりと、現地での運用で対処する事が多いです。

■4 電波強度最大状態での連続稼働時間を考えよう

森のパスポートは企画上、アウトドア環境での利用がメインです。
ある程度反応する範囲が広くがないと体感的に気持ちよくなりません。
ACCESS社のビーコンは電波強度の設定が出来るのですが今現在はデフォルト(中間)設定で大体7〜10M前後で反応します。これくらいであれば子供が適当に歩き回っても大体検知する事が出来るので難易度的にも丁度良い感じになりました。

電波強度は上げれば上げるだけ範囲が広くなり、干渉にも耐えやすくなります。
ただデメリットとして隣接するビーコンが近すぎると両方に反応してしまったり、ビーコン側の電池の消耗が激しくなります。

中期的な運用をするならば最大にした場合の連続稼働時間は企画段階で検討しておいた方が良いですね。
全国の野山に置いてみたけど1ヶ月で電池切れて交換、とかなるとあまり現実的ではなくなるので。

ちなみに電池が減るとビーコンの発信する電波も不安定になるのでアプリも思わぬ挙動をしたりしますのでそれも注意しましょう。

■5 アプリ側のビーコン検知処理は適当にしてはいけない

デバイスや運用方法も気をつけないといけないですがアプリ(ソフトウェア)側も考慮する事が色々あります。そもそもiBeaconはアプリ側で特定のビーコン端末からの電波をキャッチして処理をする事で成り立ってるのですが、この電波をキャッチする処理も何も考えずに動かしているといくらBLEで電力が抑えられてもスマホの電池はアメ車並みに消費されていきます。

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森のパスポートではストレスなくアプリがビーコンに反応する為の受信周期を繰り返しテストして設定し、一度反応したビーコンに関してはその後一定期間、電波を無視する事で余計な処理が繰り返されないようになっています。見えない努力というヤツですね。

■6 これでもかというくらいアプリのテストしよう

当たり前なのですが、テストがとっても重要です。
ビーコンはBluetoothです。つまり2.45GHz帯の無線です。
この帯域は電子レンジとかWiFiとか色々干渉します。さらに反射とか人や遮蔽物での遮断とかで電波状態は変化します。

電波状態が変わる、という事はビーコンの設置場所を変えなくてはならない事もあります。
机上テストや開発してる建物内だけではなく、必ず実施前に限りなく実施環境に近い状態でテストすることをおすすめします。
また、電池がなくなるケースが以外と盲点で、現地に行って反応悪くなるとかもあります。
状況に応じて電池の予備も用意しておきましょう。

■7 AppStore申請はビデオが必須

Appleに申請する際、審査官はビーコンを反応させる事が出来ません。なのでちゃんと反応している状況のムービー提出を求められます。面倒くさがって提出しないと審査期間は伸びる一方なので、スマホ撮影でも良いのでちゃんと撮りましょう。

■8 バックアップ端末とバックアッププランを用意しておく

これもリアルイベント&デバイスを使う場合には当然なのですが、特に日程が限定されてるイベントなどではビーコンの不具合や電波状況の変化、アプリのバグなど想定外の事が発生します。
ビーコンを50台使う企画だったとしても実際には1.5倍くらいの台数を用意しておいた方が良いです。
その際に余剰なビーコンのUUIDをアプリ内でどう扱うかなどの設計を含めて、何かあった場合にも現地で対応出来るようなプランは必ず用意しておきましょう。
森のパスポートでもバックアッププランとビーコンは用意してて、実際必要になるシーンもありました。

■9 アプリを使う人(体験する人)へのフォローをちゃんとやる

ビーコンはOSが古いと反応しないです。
それはアプリの対象OSなどで縛ったりも出来ますが、それ以外にもBluetoothをONにしたりアプリ起動時に出てくる通知とGPSのダイアログに「はい」を押さないと反応しない、などなどユーザに設定してもらわないと正常な体験が出来ない事があります。この辺りのフォローをちゃんとしないといざ当日になって沢山の人が参加しても「あれ、反応しない」みたいな事になるので注意しましょう。

以上がイベントを何度か運営して分かった事です。
iBeaconを利用したリアルな施策は実施して始めて分かる事が多いですね。

実際、この森のパスポートで得た知見は上記以外にも色々あって他の色々なお仕事で生きていてます。
森のパスポートはプロトタイピングから始めたプロダクトです。
今はワークショップを通じて親子が自然の環境に帰って学習出来るという形で色々な方に体験して頂いてますが、作る側としてはそれ以上に得るものが多いなーと思いました。

冬の間は虫も冬眠して森のパスポートが実施出来る環境も少なくなりますが、次に向けてまた色々考えて進めていこうかと思います。

では。