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6月24日、カンヌレポート③:カンヌライオンとデザイン

こんにちは、加賀谷です。
カンヌライオン視察、初参戦のアートディレクターです。
最初は右も左も分からぬ状態でソワソワしっぱなしでしたが、ここ数日やっとカンヌの街を一人で散歩できるようになりました。
カンヌライオンも中日4日目を迎えて、ますます盛り上がってきています。
自分はアートディレクター/デザイナーの視点からレポートしていきたいと思います!

会場に到着してまず初めに目に飛び込んでくるのは、今年のカンヌライオンのキービジュアル。
壁や地面、巨大ディプレイなどいたるところに展開されています。

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一枚絵としてだけでなく、色々な展開ができるよう、特徴的な形や色のパーツを制作することで、デザイン的な汎用性をもたせた良いクリエイティブだと思います。個人的にもPOPでアニメーションライクな好みのデザインです。

そして、次に目に入ってくるデザインは、各協賛企業がこの日のために気合を入れて作ってきた、ノベルティーや小冊子。
簡易なものなど一つも無く、どれもハンパない完成度です!

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また、いたるところに各企業のセミナー告知のポスターが貼られています。
大量のポスターが張り出されるため、各企業、色をもたせつつ目立たせるための工夫をしています。

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さて、カンヌライオン4日目(6/24)の最注目のセミナーはR/GA。
今、世界で一番とんがったクリエイティブエージェンシーです。
先日までのAward Ceremonyでも、何度も壇上に上がってGold Lionsを獲得していました。
告知ポスターもコーポレートカラーの赤を前面に使用した、インパクトのあるとんがったデザインです。

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セミナーのタイトルは「スタートアップ:マディソンアベニュー対シリコンバレーという対立軸ではなく、一緒が一番良い」ということで、ここ数年でR/GAで行われた新しいビジネスの展開が主として話されました。CEO、ボブグリーンバーグのほか5人が登壇。

「R/GAは現在、進化を求め「スタートアップ(新規、起業)」をしています。スローガンは “R/GA, for the contacted age” 。そのため、いわゆる広告会社ではなく、新規領域としてビジネスコンサル、プロダクトとサービス開発、そしてコミュニケーションなどの事業を行っています。

広告会社の仕事は年々狭い領域に押し込められていて、小さい仕事でも競合になり、予算も絞られています。しかも、広告主はイノベーションを必要としています。なので、他の広告会社はラボやインキュベーションシステムなどを初めているのです。そこで私たちも、グーグルの考え方の基づいて、企業活動の20%を新規開発に費やすようになりました。その新規開発の活動が「R/GA Accelerator」です。

R/GA Acceleratorとは何か?それは、私たちが起業家を10社選定し、3ヶ月、120K$の投資、5%の株のエクイティーを条件に、一緒にビジネス開発をする。特にその商品開発やソフト開発のことです。」

ということで、R/GA Acceleratorによって開発された商品・サービス事例がいくつか紹介されました。一つ目は、小児ぜんそくを直す為に肺を強くする為のトレーニング用呼吸器を使ったゲーム “alvio by qol” 。

その他、カンヌのイノベーションライオンのショートリストに選ばれている4つが紹介されました。

・赤ちゃんの体調をリアあるタイムにモニターするしくみ “Owlet”
・本棚ぐらいのスペースで、野菜を家の中で育てられる “Grove”
・20分で農家が育てている穀物や野菜を分析する小さな装置 “BioRanger”
・自転車用の道案内デバイス “Hammerhead”

そして今現在、LAドジャーズとスポーツに関するAcceleratorをやろうとしているそうです。
また、Startup Academyをカンヌと組んで始めたところで、「スタートアップ・エコシステム」を作り上げているそうです。

まだ中日ではありますが、聞いた中で一番勉強&刺激になったセミナーでした。
先を行き過ぎていて、イマイチ実感は無いものの、クリエイティブエージェンシーの未来の姿を指し示しているように感じました。

 
そして、4日目24日の夜もAward Ceremonyが行なわれました。
部門は「デザイン」「プロダクトデザイン」「サイバー」「ラジオ」の4部門。
中でもデザイン部門は、自分が毎年注目している部門です。今年のデザイン部門は審査委員長によると、皆でデスカッションした結果「問題を解決することこそがデザインである」と定義し審査したそうです。したがって、方針がいくつかあるとするならば、クラフトが優れたものを評価するでなく、もっともっと深い課題解決をしているものを評価したそうです。また、ブランドの存在意義をいかに伝えているか、そういったものを表現しているものなども評価をしたそうです。つまりスタイルチェンジでは足らず、ワールドチェンジをしているようなクリエイティブで無いとダメということでしょうか。

デザイン部門のグランプリの紹介前に、ゴールドを2つほど紹介します。

Burger King “Proud Whopper”

アメリカで開催された、レズビアン、ゲイ等の文化を讃えるイベント「PRIDE」。
このイベントに際し、Burger Kingから「Proud Whopper」という限定メニューが発売されました。
実際に施策が行われている様子は以下の動画から。

ビデオでもお分かりの通り、パッケージはレインボー(PRIDEのイメージカラー)なのに、中身は普通のワッパー。
そして、そのパッケージに書かれたメッセージは「We are all the same inside(私たちみんな中身は同じ)」。
今年は、こういった課題解決の形そのものをデザインと捉え、評価する傾向にあったことがこの受賞からうかがえます。
このクリエイティブは、先日までも色々な部門でGoldを獲得していますが、デザイン部門でも最後までグランプリ候補だったそうです。

States United to Prevent Gun Violence “The Gun Shop”

ポップアップの中古銃ショップを作り、初めて銃を購入しに訪れた客に、その銃が過去どのように使用されたかを告げるというもの。それを聞かされたほとんど客は、銃を買うのを断念する。結果、このようにすることで購入希望者の80%が銃を購入しなかった。
もはや、このクリエイティブで言えば、従来のクラフト的なデザイン要素は全く無いと言っても良いです。。

そしてグランプリは、先日のプロモのグランプリに引き続き、またしてもVOLVOの「Lifepaint」! 強いです。

VOLVO “Lifepaint”

 
このように今回、デザイン部門では企業の一商品が、生活者にメッセージを伝え
世の中を良くしていくようなクリエイティブが評価されていたように思います。
この部門は、従来のクラフト的なデザインを評価する部門では無くなってしまうのでしょうか。

正直、自分としてはすごく寂しいですが、事実として受け止めなければならず、
デザイン部門での賞の獲得は、少なからず今年のこの結果を加味する必要があるでしょう。

実は今年にいたっては、この傾向が他の部門にも及んでいます。
特にサイバー部門では、テクノロジーやクラフトを評価するだけでは無く、
その前のアイデアの部分を大きく評価する傾向にあった気がします。

 
その他の受賞情報は、ほかでもまとめてくれているので割愛します。

受賞作品まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2143523779895237301

 
次回は、フロントエンドエンジニアの岩橋がレポートします。
お楽しみに!