こんにちは! HACKist_(ハックイスト・アンダー)です。
先日原宿Galaxy銀河系にて行われた3回目のHACKist展「DIGITAL DIVREZ」で展示していた
HACKist_(ハックイスト・アンダー)による「別世鏡」の紹介をさせていただきます。
※HACKist_(ハックイスト・アンダー)とはイラストとテクノロジーを程よくブレンドし
漫画/アニメ/ゲームの可能性をデジタルの力で広げるようなプロトタイプを提案、発信していくチームです。
「別世鏡」とは?
突然ですが「二次元に行きたい」と思ったことはありませんか!?
別世鏡は自分がキャラクターに成り代わり、漫画からリアルへ、リアルから漫画へと
「二次元」と「三次元」の境を曖昧にさせていく装置です。
一連の体験は無料配布のストーリーペーパーを読むところから始まります。
ペーパーを読み終わった参加者は実際に漫画のシーンを再現した部屋に入り
途中抜けている1ページで何が起きたのか主人公の目線で追体験いただけます。
※ストーリーペーパーの漫画はこちらから読むことができます。
部屋には不思議な鏡があり、鏡に自分を映すと自分の姿が漫画の主人公になり変わります。
机の上には大きな本が2冊。
片方を手にとって開くと鏡に映った自分が悪魔の姿に、もう片方を開くと天使の姿に…。
こうして2つの別世に存在する自分を見つめる主人公は物語の最後どうなってしまうのか?
体験の一連の流れや、仕組みについて、動画でまとめましたのでぜひご覧ください!
世界観の作り込み
今回は没入感をしっかりと作り込むために物語の設定と、部屋の再現にはかなり力をいれました!
部屋のテーマは「かつて占い師が居た部屋」。
鏡に見えるものは実際は鏡面モニター。オーダーメイドで作った絵画フレームを取り付け
上部分にあるWEBカメラもレーザーカッターで制作したフレームで隠しました。
他にも部屋のいたるところに小道具や怪しい絵柄の古びた用紙を置くことで、ぐっと世界観が出るようにしています。
また体験のコアとなる本はデバイスを中に組み込めるようにし、昼と夜でデザインを変えレーザーカッターで加工した表紙部分にはLEDを仕込んでいます。
キャラクターに息を吹き込むLive2D
漫画の中に登場したキャラクターを、その漫画の印象のまま、人の動きに合わせて動かす必要があったため、
今回はHACKistとして初めて、Live2Dというソフトウェアを使用しました。
Live2Dのパラメータ制御部分をうまくプログラムと連動させ、1モデルのみで、様々な変化を実現しています。
瞬きや首傾げなどの基本の動作のほか、悪魔と天使に変化した際は、
それぞれ髪の色や顔にある模様が変わるだけでなく、羽根の部分まで動くように設定していました。
システムとデバイス
今回制作したシステムと本型のデバイスの構成はこのようになっています。
本型のデバイスでは、本の開閉を検知するために、リードスイッチというものを使っています。
このスイッチは磁石を近づけると電流が流れるといったもので、
このスイッチを使うことで本の中に仕込んであるArduinoが開閉を検知していました。
そして、そのArduinoは開閉を検知すると、ZigBeeと呼ばれる無線モジュールを使ってPCに信号を送っています。
メインPCでは、今回はかなり複雑なシステム構成になっています。
まずWebカメラから顔認識を行うための画像を取得し、それをFacerigというソフトウェアが受け取ります。
Facerigとは、Webカメラに写っている画像から、顔認識によって顔がどこに向いているのか、
また顔の表情などをよみとり、それをアバターに反映させて表示するソフトウェアです。
このソフトウェアを使うことによって自分たちの作ったキャラクターを、自分の顔に合わせて動かすことができます。
そして、FacerigからopenFrameworksにそのアバターが動いている画像を送信します。
openFrameworksは、その受け取った画像をOpenCVを使いクロマキーによってキャラクターのみを抜き出し、
openFrameworksで表示している背景と合成します。
openFrameworksでは、背景合成以外に、Kinectを使用して、体の傾きや手の高さを取得していて、
体が前のめりになると、アバターも一緒に体を前のめりにしたり、
自分が手を振るとアバターもそれに反応して手を振り返してくれます。
また、PCにZigBeeによって送られてきた信号もOpenFrameworksによって取得し、アバターの見た目を変化させています。
この動作を行うためには、openFrameworksからFacerigに何かしらの通知を行わないといけないのですが、
Facerigはもともと独立したシステムなので、受け取れる入力がキーボードかマウスしかありません。
そこで擬似的にキーボードが押されたという信号をPCに送ることができるArduino Leonardoを使用しました。
openFrameworksが体の動きや本の開閉を検知すると、Arduino Leonardoに命令を送ります。
Arduino Leonardoは送られてきた命令によって、Facerigに送信するキーボードのキーを切り替えることで、
手を振るアニメーションや見た目の変化といったことを実現しています。
今後の展望
今回の作品は、 Live2D Creative Awards 2016 にて CreativeAward賞 を受賞することができました。
デバイス、顔認識、Live2D等… 新しい技術を使わず、既存の技術だけでも、
組み合わせと演出次第で、まだまだ様々なことができそうです。
今回はこれらの合わせ技で、VRともまた違う、不思議な没入感を作り出せたのではないかと思います。
HACKist_ は引き続き、漫画/アニメ/ゲームの可能性をガンガン広げていきたいと思います!
/ Staff List
- イラスト : わかたさき
- 内装、クラフト、ロゴデザイン : さーにゃ
- Live2Dモーション : いとまり
- プログラミング : あさひだくん
- サウンド制作 : 剣持学人
- クラフト制作協力 : 小井仁
- デバイス制作協力 : 進藤俊彦