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彩りを変えるステッチ、「ふわッチ」

2016年5月の第3回HACKist展にて出展させていただきました。

 

繊維に対する新しいアプローチ

繊維は人々の生活に欠かせないもので、その長い歴史から様々な織り方が編み出され、
工芸分野からインテリア、その人に合わせたファッションスタイルにまで広がっています。

なかでも近年では、衣服の色を動的に切り替えるというアプローチが着目されていると思われます。
光るスカートや、ファッションつながりでいうとFES WatchVixoleなど、
その時の気分やシチュエーションによって切り替えられる楽しみができそうではあるものの、まだまだ実験的であったりします。
また、そのアプローチもLEDのような発光体をすえつけた実装が多いようではあります。

今回、LEDのような発光体を用いず、繊維自体の色を変えられないか取り組んでみました。

 

サーモインク × Arduino

「Access to Materials -デザイン/アート/建築のためのマテリアルコンピューティング入門 」という書籍に、
やりたい事柄に近いものがあり、ひとまずそれをやってみました。

サーモインクという温度によって色が変わる試料に布を浸し、
Arduinoから導電糸(電気を通すステンレス糸)を這わせて、
あてた箇所の色を変えるというものです。

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画面右側にサーモインクが熱せされ、導電糸に沿って色がピンクに変わりました。

やってみた結果、確かに色は変わるものの、繊維が塗った周辺に染み込み、
形どったものをいろ付けようとすると滲んで見えてしまうのが課題でした。

そこで、布にサーモインクを浸すのでなく、糸をサーモインクに浸す方法に切り替えました。
以下が、HACKist展で展示した際のイメージです。

fuwatch_02

Arduinoと導電糸の間にスイッチを設置し、
スイッチを押すと電流による熱で糸がピンク色になり、
離すと温度が下がり徐々に糸が元の色に戻っていきました。

右から2,3つ目のステッチに導電糸を縫い込んでいて、その部分で色が変わっています。

 

やってみた感想

今回、本のやり方にプラスアルファを加えてみた形ではありますが、
回路図含め動く形にもっていけたのは良かったです。

やってみての課題としては、以下のような点が挙げられます。
・LEDと違って光るわけではないため、照明環境によっては変化が見えづらかったりする
・使ったサーモインクが青 -> ピンクの切り替わりだけだったので、他の色のサーモインクと組み合わせると良さそう
・今回、一部箇所の色を変えるものだったので、模様を工夫する必要がある
・温度変化が小さいため、糸の色が変化するのに時間がかかる
・導電糸が絡まった状態で電流を流すとショートするため、ヒータなり別の熱源でできないか
・展示ではArduino及び電源orバッテリーを用意する必要があり、着て移動するには持ち運びしやすいパッケージ化が必要
・洗濯できるのかという質問を受けたので、実用化には洗濯にも耐えうる備えがあると良い

なお、「ふわッチ」の由来は、
「ふわっ」と色が変わる「ステッチ」、になります。

 

スタッフリスト

八木 啓太
高野 祥宏