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【SXSW2017】 広告プラナーが未来から持ち帰った5つの「問い」

こんにちは。新メンバーのtakuroです。
SXSWのレポートをプラナー視点でお届けします。

まず前提として

カンヌには「解」がある。
SXSWには「問い」がある。

と言われるほど、SXSWには未知のテクノロジーや未解決の課題がゴロゴロしています。
両者の違いは、こう言い表すこともできるでしょう。

カンヌ:過去1年間の作品を振り返って表彰し次世代のクリエイティビティを予見する「フォアキャスト」志向
SXSW:どんな未来を創りたくて、そのために何を今やるのかを、スタートアップや研究者が集まって実行する「バックキャスト」志向

いずれも間違いなく未来をクリエイトするための動きであり、両方の視点を持っていることで本当のイノベーションが起こせるのではないかと思います。

私は昨年度のSXSWに視察目的で初参加して、それまで8年間の広告業界ライフで良しとされていた価値観(カンヌ至上主義)を叩き壊されるような感覚を覚えました。
SXSWでは、成功事例が綺麗にパッケージ化されたケースフィルムなどほぼ見かけず、荒々しい形相のプロトタイプや出口の見えない議論が無造作に転がっています。まるで初めてのアジア旅行で見知らぬバックパッカー街にたどり着いたときのような、不安と好奇心が入り混じった高揚感を思い出しました。

今年は、出展やスピーチなどのよりディープなSXSW体験から、5つの「問い」を持ち帰ることができました。

1. リアリティを増したバーチャル体験は現実にどんな影響を与えるのか?
2. 音声と画像のデータ処理が容易になることで、どのようなUIが普及するのか?
3. 広告領域のアイデアは、ビジネス領域でも通用するのか?
4. 企業はどのようにイノベーション機能を持つべきか?
5. 100年後の未来に「旅行」という概念は残るのか?

今回はVR関連の事例レポートも兼ねて1つ目の問い

「1. リアリティを増したバーチャル体験は現実にどんな影響を与えるのか?」

について書きたいと思います。

 

まずはVRに関する4つの事例をご紹介します。

事例1:台湾発の8k画質360度カメラ(正式名称不明)
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8K画質がVRにも持ち込まれ、3D映像の解像度は高まり続けています。すでに現時点で、人と人が会話するくらいの距離ではほぼ現実と変わらない解像度を体感できるようコンテンツが存在しています。

事例2:The Music Room

VRならではの楽器演奏空間。バーチャル空間が主語となって現実空間に対して干渉する、これまでと逆のアプローチが試みられている。

事例3:OSSIC

音を全方位的に感知できるヘッドホン。このような周辺技術の進歩によって視覚以外の体験が向上している。

事例4:Sensiks

匂いや熱風など五感でVRを体験できるボックス型装置。周辺技術だけでなく「演出」方法も進化している。ここは広告業界にとっても得意分野なのでは?

これらの事例を見ていると、「バーチャル体験のリアリティは今後も高まり続ける。現実との関わりにどんな変化が起きるだろう?」という疑問が自然と湧いてきますよね。

かつてインターネットは、現実とは別世界のように認識されていましたが、近年ではリアルな生活の一部となりました。その延長線上で考えれば、バーチャル空間は現実と等しい、あるいはそれ以上の価値を持つ空間になりえます。

そのとき、例えば墓をバーチャル上で創作する人が現れるかもしれません。その墓に生前の人物のデータに基づいたAIが備われば、埋葬という文化や宗教にも変化が生まれそうです。

旅行はどう変わるでしょう?肉体的な移動を伴わずに様々な土地の風景や文化に触れることができるのであれば、「実際の移動」という体験こそが高級な旅行スタイルに進化するかもしれません。

リモートワークの普及が現在も進んでいますが、ほぼ全ての仕事がバーチャル空間でより効率的に進む可能性もあります。その時、アパレル業界はバーチャル空間上の衣類に注力することになるでしょう。

このようにSXSWで自分なりの「問い」を見つけ、それに対する仮説を考えることは、各種業界の未来を先回りして考えることにもつながります。その仮説からプロトタイプを生み出していくことで、業界課題の解決につながるサービスや製品が生まれることもあるでしょう。プラナーにとってのSXSWは、新しい広告手法のネタ集である以上に、広告会社の未来のビジネスモデルのヒントの宝庫だと思います。

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広告会社が拡張しつづける、クライアント課題に対するソリューションをイメージにすると↑のように描ける。サウスバイに集まる技術やサービスもこの中へ。戦略と戦術が混同するカオスな状況が続く中で、技術に対する正しい理解がプラナーにも求められる時代へ。

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この図のように課題自体を能動的に発見することで、ビジネスクリエイションやコンサルティングが広告会社の新しい提供サービスになりえる。点の技術ではなく、面で何が起きているか捉えるためには、広告と技術に限らない「自分らしい視点」がより重要になるかもしれない。(この辺は、広告アイデアをビジネスに活かせるか、という「問い」とも関連しそう。)

前述した他の4つの問いについても引き続き思考をめぐらせ、研究開発に生かしていきたいと思います。

takuro