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The Falling Moon [HACKist 4th Exhibition]

【写真】The Falling Moon メインビジュアル

はじめに

2017年10月26日から29日の4日間。HACkistの4度目の展示である【HACKist 4th Exhibition – Connective Design:テーマとテクノロジーをつなぐデザインの実験】が行なわれました。

今回のエントリーはその中の作品の一つである【The Falling Moon:VRアドベンチャー】と銘打ったVR体験コンテンツについて触れたいと思います。月の落下により崩壊する世界のラスト3分間を体験するVRアドベンチャーです。VRでのリッチな視覚&身体体験ではなく、情報量を絞りREAL空間とVR空間を繋ぐことで「VRのナラティブ性」について深くアプローチすることを目的としています。

VRを考える上で見えてきた課題

VRコンテンツを作る上で幾つかの実例をやってみた結果、構築された世界への没入感は相当高いレベルである反面、身体情報の視覚、聴覚、触覚のみでそれを体験しなければならず、現実と比較して「何かが足りない」という印象を持ちました。
さらにヘッドマウントディスプレイを装着することで、いかにもこれからVRを始めますよ!という線引きがありその感覚にも改善点があるような印象を受けました。

この「何かが足りない」という漠然とした課題。

プロジェクトの大半の時間を割き、メンバーでディスカッションを続けた結果、VRでのリッチな視覚&身体体験ではなく、情報量を絞りREAL空間とVR空間を繋ぎ「VRのナラティブ性」についてアプローチすることで課題に対しての一つの解が提案できると考えました。

アイディアと制作期間

VRの体験時間を3分と設定。短すぎても伝わらないし、長すぎてもVR酔いの懸念がある中で導き出した時間。
限られた時間の中で行う体験をどう現実世界の体験とシンクロさせるかでした。

こればかりは考えても限りがある部分でしたので、実際のものを作っては複数人でのデバッグ+意見交換というセットを何度も行い、ストーリーの軸を決めるor修正の繰り返し。何度もゼロベースから作り直しを行う為に制作スピードが求められます。
課題抽出のディスカッションの間の数日を使いいくつものサンプルが作られ、そして消えていくというまさにコンテンツタイトル通りの制作スタイルを貫いた感があります。

【写真】VR開発のテストプレイ

プランが固まり最終的に使うプログラム部分や会場のセッティング、オペレーションなどを確認しつつ仕上げを行い、展示前日のギリギリまで調整を続けていました。

【写真】展示会場のセッティング写真

【写真】VRコンテンツのコントローラーとなるオール

【写真】体験終了後に配られる世界を救うためのヒント

【写真】プレイイメージ1 VRの中にある施設全景

【写真】プレイイメージ2 落ちてくる月

【写真】プレイイメージ3 モノリスの起動

展示期間中の運用

ヘッドマウントディスプレイの装着やコンテンツの説明、安全面の確保などでどうしても運用には人の手が必要となってきます。それをネガティブにはとらえず展示期間中に気づいたことを運用スタッフ間で共有し、オペレーション手順の改善やプログラムの更新などを随時行えたのは大きな成果だと思っています。(初日と最終日ではVR世界も少し変わっていたことでしょう)

オペレーションについては事前に想定していた管理用のインターフェースがあり、その状態を見ることでスタッフ間の引き継ぎも数分で行えるなどの事前準備が効いていました。これについては次の機会で触れようと思います。

展示を終えて

今回は「VRのナラティブ性」に対してのアプローチでした。振り返って反省点や追加で作りたい部分などはあるのですが、それを差し引いてもやはりVRは非常に強力な体験装置です。
ただどうしても一人でやることが前提になってきます。今回のように1:1の体験。それはそれで重要なのですが、1:N。多数の人が同時に体験できるものについて考えても面白いと思います。

今回の展示会を経て、ユーザー体験の重要性を非常に強く意識でき、その取り組みに関われて非常に良い刺激を受けることができました。
この経験を生かしてまた面白いものを作っていけたらと思っています。

ご来場いただいた皆様、そして関係者の皆様!ありがとうございました!!!

Credit

クリエイティブディレクター/アートディレクター/デザイン
望月 重太朗

デザイナ/テクニカルディレクター/VR構築
小井 仁

演出/シナリオ
下田 彦太(CluB_A)

ミュージック/サウンドデザイン
太田 昌孝(MUSE CREA inc)

ボイス
李そじん(青年団、東京デスロック)

レコーディング
村井 宏志(r STUDIO)

デザインアシスタント
諏訪真

運用/アシスタント
阿部 世理